ロゼッタストーン日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 10月10日(水) 『四百万企業が哭いているードキュメント検察が会社を踏み潰した日』(石塚健司著)

<<   作成日時 : 2012/10/10 07:06   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 1 / コメント 0

つい最近、最高検公判部長の男性検事が東急田園都市線・溝の口〜あざみ野の全駅で、電車のドアに荷物を挟み、閉まるのを妨害したという事件があった。仕事のストレスからやってしまったと供述しているそうだ。この検事がどんなストレスをためていたのかは知らないが、いまの検察では、まともな人間が育たないような気がする。

『四百万企業が哭いている』の本を知ったのは、郷原信郎氏のブログ記事だった。(「正義を失った検察」の脅威にさらされる「400万中小企業」)
http://nobuogohara.wordpress.com/2012/09/11/%e3%80%8c%e6%ad%a3%e7%be%a9%e3%82%92%e5%a4%b1%e3%81%a3%e3%81%9f%e6%a4%9c%e5%af%9f%e3%80%8d%e3%81%ae%e8%84%85%e5%a8%81%e3%81%ab%e3%81%95%e3%82%89%e3%81%95%e3%82%8c%e3%82%8b%e3%80%8c%ef%bc%94%ef%bc%90/

この事件の容疑は、エス・オーインクという衣料品会社を経営する朝倉亨氏とコンサルタントの佐藤真言(まこと)氏が「東日本大震災復興緊急保証制度」を悪用するため、決算書類を偽造し、銀行から融資金約1億1千万円をだまし取った…というもの。それだけ聞くと、なんちゅう悪い奴だ…という気になるけれど、この本で描かれているのは、多くの中小企業がやむにやまれず粉飾決算をして銀行から借り入れをしている現実と、佐藤氏、朝倉氏の真面目で誠実な人柄、仕事ぶりだ。

2人は一審でともに懲役2年4か月の実刑判決を受け控訴したが、佐藤真言氏の控訴審(9月28日)では高裁は一審の実刑判決を維持。今月3日に開催された朝倉氏の控訴審は、江川紹子氏のツイッターによれば、「わずか10〜15分の被告人質問すら認めず、手続きだけやって結審した」そうだ。朝倉氏の判決は、11月7日に下されるというが、この流れでは厳しい結果が予想される。

スピード違反をする者は多いが、見つかったら罪だ。駐車違反をする者も多いが、見つかったら罪だ。検察や裁判官は、粉飾決算をする者は多いかもしれないが、それは罪だ…という発想なのだろう。だが、いったん摘発したら、その影響は非常に大きい。朝倉氏の会社は、ようやく単年度黒字が達成できる見通しが立ったときだったが、逮捕によって倒産。従業員は働く場を失い、下請けの縫製業者も廃業に追い込まれた。

朝倉氏は銀行への毎月の返済はきちんとしていた。佐藤氏も粉飾決算によって借り入れたお金で私腹を肥やすことはなく、毎月のコンサルタント料をもらっていただけだった。逮捕がなければどこにも「被害者」は出なかったはずだが、逮捕により返済ができなくなった。検察の「正義」は正しいのだろうか? 裁判所の「正義」は正しいのだろうか?

私も一応零細企業の経営者なので、資金繰りの苦しさはよくわかる。銀行は決算書の数字だけで判断し、赤字だとお金を貸してくれない。個人的には、粉飾決算でお金を借りるべきではないと思うけれど、「被害」が出ていないのに逮捕して実刑というのは、厳しすぎるんじゃないだろうか。
本の中で一審の弁護を担当した宗像紀夫氏は「震災保証を受けた会社を調べていったら、かなりの数がそれ(粉飾)をやっているはずだよ。捜査をもっと広げたいなら、中小企業向けの保証融資を受けている会社を全部調べてご覧よってことだよ。ほとんどマイナスの会社だよ、たぶん。そんな捜査をやっていったら、大変なことになるでしょ。だからつまりね、こんなものは検察のやるべき領域じゃないんだよ」と述べている。

もともと特捜部が佐藤氏に目をつけたのは、別の事件がきっかけだった。元銀行員が悪質な融資詐欺で巨額なリベートを手にしていた。その事件の捜査は終結したが、その男が怪しい融資をしていた会社の一つに巨額の使途不明金のある会社があった。検察は、その会社のコンサルタントをしていた佐藤氏が、融資詐欺事件の元銀行員と似たような経歴だったことから、佐藤氏が粉飾決算を指導して銀行から融資を受けさせ、そこから裏報酬を吸い上げていたのではないかと考えたのだ。実際には、佐藤氏が受け取っていたのは毎月のコンサルタント料だけで、その会社の経営者は、都合の悪い部分については佐藤氏にウソをついていたのだが…。

しかし、捜査は佐藤氏がコンサルタントをしている他の会社にも及んだ。佐藤氏の顧客企業のなかには粉飾決算をしている会社が複数あったが、朝倉氏のエス・オーインクは震災関連の保証制度を利用していたために、捜査の対象となった。通常の粉飾決算はありふれているが、「震災」がらみなら国民感情に訴えることができ、マスコミも食いつく事件になるだろうと特捜部は考えたらしい。

震災関連だったら、復興予算をまったく違うことに使っている国のほうが、よっぽど「詐欺」じゃないかって思っちゃうけどね。

朝倉氏は、保釈後、荷物配送など肉体労働のアルバイトを続けているそうだ。佐藤氏は、アルバイトのあっせん会社に登録して日雇いで働きながら、仕事の合間に司法試験の予備校に通い、弁護士をめざしているという。執行猶予付き有罪の場合は、執行猶予期間が終了すれば弁護士になれるが、実刑判決を受けた場合、刑の終了から十年経過しないと欠格事由がなくならない。だが、佐藤氏は実刑判決を受けたあとも弁護士の夢をあきらめていない。実刑を受けた場合の欠格事由は、行政書士だと2年間、司法書士だと3年間、弁護士だと10年間で消える。佐藤氏は2年経ったら行政書士の試験に挑戦し、3年経ったら司法書士に挑戦し、そして残り7年勉強して司法試験を受けると宣言している。こういう現場の苦労がわかっている人は、いい弁護士さんになるだろうなあ。

本のなかで朝倉氏は検事に聞きたいことがあると、こんな発言をしている。
「検事さん、あなたは、今やっていること、好きですか? なにかをプラスにしている仕事なんですか? その仕事で何かがプラスにならなくてもいいんですか? いつも、どういう気持ちで過ごしているんですか?(中略)私はずっと、好きなものを触って仕事してきました。その品物を喜んで着てくれる人たちがいた。彼ら(検事)は何が目的で生きているんですか、教えてください」

被害のないところに被害をつくる仕事ばかりしていたら、良識のある検事ほど、仕事が嫌になってしまうだろう。検察改革をなんとかしないと、検事になりたい人だっていなくなってしまう。検察は巨悪に立ち向かう存在であってほしいのに…。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
5月11日(土) 出版業界でも突然逮捕されちゃう!?
元銀行員、佐藤真言氏の『粉飾』(毎日新聞社)を読んだ。以前、『四百万企業が哭いているードキュメント検察が会社を踏み潰した日』(石塚健司著) という本について紹介したことがあるけれど、 あの事件の当事者が書いた本だ。 ...続きを見る
ロゼッタストーン日記
2013/05/11 21:04

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
10月10日(水) 『四百万企業が哭いているードキュメント検察が会社を踏み潰した日』(石塚健司著) ロゼッタストーン日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる