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zoom RSS 11月19日(土) 『凶刃』著者、矢野啓司さんの死を悼む

<<   作成日時 : 2016/11/19 14:41   >>

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弊社発行の『凶刃』著者で、ロゼッタストーンで「『凶刃』その後、裁判レポート」を連載してもらっていた矢野啓司さんが先月亡くなった。

啓司さんは私が時々顔を出していた会合の常連だった。2005年12月、息子の真木人さんが通り魔に襲われて亡くなった。加害者は精神科に入院中の男性で、一時外出中に包丁でいきなり真木人さんを刺殺したのだ。事件が起きたあと、矢野さんは奥様と一緒に会合に参加し、「このまま犯人が不起訴になってしまったら、真相が何もわからないまま終わってしまう」と、刑法第39条(心神喪失者は無罪)の理不尽さを訴えていた。「裁判で真相を知りたい、世の中の人にこの事件に注目してもらいたい」と必死な様子だった。

「1か月で原稿が書けるなら、事件に関する本を出版することはできますけど…」と私は時間的に難しいだろうなと思いつつ、提案してみた。「やります」啓司さんは即答だった。

「できるだけ詳しく具体的にその日の状況を思い出して書いてください」と、愛する息子さんを失って傷ついているご夫妻に私は残酷な要求をした。矢野さん夫妻と真木人さんの妹さんは、心の痛みに耐えて本当に1か月で原稿を完成した。本は2月に出版、いくつかのマスコミでも取り上げられた。

その影響があったのかどうかはわからないが、結果的に裁判は開かれ、加害者には懲役25年の判決が言い渡された。

それから矢野夫妻が取り組んだのは、加害者が入院していた病院の責任追及だ。息子の死を無駄にしたくない、少しでも世の中に貢献したいという思いで、精神科のずさんな治療を問題視し、民事裁判で病院を訴えた。最高裁の上告棄却まで10年間に及ぶ長い闘いだった。

医療裁判は知識の少ない患者側が圧倒的に不利といわれるが、矢野さんの奥様の千恵さんが薬剤師であったこと、外国に精神科の医者の友人がいたことなどから、裁判はかなりレベルの高い争いになった。裁判が長期にわたったこともあって、矢野夫妻は専門家顔負けの知識を身につけ、医者の薬の処方が適切になされていれば、そして薬の変更後に患者をほったらかしにしていなければ事件は起きなかったと訴えた。加害者の両親も原告に加わった珍しい裁判だった。

矢野啓司さんが脳出血で倒れたのは、高裁での判決が出る直前、今年の2月9日だ。1月29日判決の予定が急きょ2月26日に延期され、それを待っている間の出来事だった。「麻痺が残っていて喋れないが、判決内容は理解している」と奥様の千恵さんはおっしゃっていた。

啓司さんは地裁で争っている頃から、「おそらく最高裁までの争いになるだろうから」と、長い将来を見据えて裁判に取り組んでいた。「医療にも裁判にも問題がある。いずれは『凶刃』に続いて『法刃』『医刃』と3部作で本を出したい」というようなことも言われていた。個人的な恨みを超えて、精神医療を改革したいという思いが伝わってきていた。志半ばで終わってしまったことがさぞ無念であっただろうと心が痛む。

精神障害というデリケートな問題は、扱い方が難しい。それゆえ、表に出ないところで「精神障害者」=「危険」という差別感情も生まれがちだ。

「精神障害者をひとくくりにするのはおかしい、精神障害者への偏見をなくすには、犯罪者への適切な処罰や、具合が悪いときには外出させないなど、適切な治療が必要だ」というのが矢野夫妻の意見だった。

裁判で敗れても、奥様の千恵さんは、

「矢野がやりきらねばならないこと」は、この事件を礎として、日本の精神科医療のあまりのお粗末さを改善することです。(ロゼッタストーンWEBより  http://www.rosetta.jp/kyojin/report96.html

とまだ諦めてはいない。これから啓司さんは天国で千恵さんの戦いを見守るのだろう。

私には何ができるだろうか……。

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11月19日(土) 『凶刃』著者、矢野啓司さんの死を悼む ロゼッタストーン日記/BIGLOBEウェブリブログ
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